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【ネタバレあり】自作脱出ゲーム、「カラージェム」のレベルデザインで考えたこと

あけましておめでとうございます。

出来れば去年で書き上げたかったのですが、ゲームのリリース自体がギリギリだったため年明け1発目の更新です。

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脱出ゲームの製作

去年(2017年)末、初めて脱出ゲームを製作してUnityroom様の方で公開しました。

脱出ゲーム カラージェム | 無料ゲーム投稿サイト unityroom - Unityのゲームをアップロードして公開しよう

AndroidやiPhoneを意識した縦長の画面構成ですが、スマホ向けのリリースは今のところ予定にありません。

開発後記はこちら backyard.hildsoft.com

以下、ゲームのネタバレを含みますので、まずはゲームを楽しんでから見ていただけると幸いです。





今回のゲームの配置図と攻略情報

主要オブジェクトの配置

まずは今回作ったゲームのイベントやアイテムの配置図から。

部屋は二つです。

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部屋1

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部屋2

攻略までの流れ

  1. 宝箱の鍵を手に入れる

  2. 宝箱を開けて、ジェムを手に入れる

  3. ベッドの下の赤インクを回収

  4. 部屋2の巻物の後ろに隠されているジェムを回収

  5. 赤インクをセット

  6. ジェム加工装置で赤、黄、緑のジェムを作成

  7. メイン装置で、ヒント1のとおりにジェムを並べて下段の扉を開ける

  8. ジェムと青インクを回収

  9. 青インクをセット

  10. ジェム加工装置で青、緑、桃、黄のジェムを作成

  11. メイン装置で、ヒント2のとおりにジェムを並べて上段の扉を開ける

  12. 部屋の鍵を回収

  13. 部屋1の扉から脱出

若干の手順は前後して行動できますが、基本はこの流れです。


ゲームの楽しさを覚えてもらい、操作の壁を取り除く

脱出ゲームの面白さ

開発ブログでも書きましたが、脱出ゲームの面白さは

「クリアすることよりヒントから謎が解けた時が楽しい」

にあり、それが楽しいからプレイすると思うのです。

なので、クリックしていれば何となくクリアできたり、理不尽な設定を持ち込むことは避けようと思いました。

脱出ゲームの操作性

脱出ゲームはアクションゲームのような繰り返しやるものでもなく、思考するゲームだと思っているので、操作性はなるべくシンプルにして操作説明無しに遊べることを目指しました。

最初の情報

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ゲーム開始時点での画面です。

この状態で何ができるでしょうか?

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まずいきなり壁や何もないところだけをクリックする人はいないと思います。

なので、ゲームに関する情報を与えられていないユーザーは上図のどれかをクリックすることになると思います。


ここで「それぞれの操作がどのように反応するか」、を少しずつ覚えてもらうのです。

  • 上部ボタン:無反応
  • ドア、ドアノブ:ドアに接近
  • 置物1:上手くクリック出来たら接近(意味は後述)
  • 置物2:無反応
  • 下部ボタン:視点の回転

この画面で全ての操作をしなくても、何度か操作を行うことで、ユーザーは下記の操作を覚えることでしょう。

  • クリックすることで接近でき、得られる情報が変わるものがある
  • 上部のボタンは特に意味は無い
  • 下部のボタンは今いる部屋を見回すことができる
  • クリックしても反応しない物もある

その他の操作についても、何かアクションをしたときに何らかの反応を与えて少しずつ操作を覚えてもらうことになります。

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例えばドアをクリックしたときに、ドアへ接近するわけですが、そのあと元の位置に戻る操作は下部のボタンをクリックすることになります。

「ドアをクリックした」事により「ドアに接近した」結果、「下部のボタンが変わった」ので、接近したドアを調べる人もいれば、何もせず下部のボタンをクリックする人も居るでしょう。

大事なのは、いずれ下部のボタンをクリックするようにユーザーを導くことなのです。

ゲーム慣れしている人とそうでない人へのアプローチ

上で挙げた情報というものは、ゲーム慣れしている人は何の意識もせず自然と行動するものです。

それまでのゲーム経験値があるから、こういう行動を取ったらこうなるだろうという予測ができるため、最初から意味のありそうな行動を取る可能性が高いです。(この先入観を逆手に取って問題を作るのも面白いですが、これを理不尽だと感じる人も居るのでバランスは難しくなりそうです)

脱出ゲームに関して言えば、簡単だった、難しかったという判断より、理屈や仕組みをヒントから想像できてその通りに動作したということが楽しさにつながると思っているので、かける時間は人それぞれで構わないのです。

大事なことは、仕組みを理解したうえで解いてクリアすることなのです。

では、脱出ゲーム慣れしている人と、そうでない人、どちらも楽しめるようにするにはどうしたら良いでしょうか?

今回作ってみて思ったことは、ヒントを増やして初心者ユーザーでもクリアできるようにするということです。


上の方で

  • 置物1:上手くクリック出来たら接近(意味は後述)

と書きました。

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脱出ゲーム慣れしている人は、何のヒントも無しにこういう所をクリックするんですね。

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結果、鉢植えに接近して宝箱の鍵を見つけることができます。

でも、この操作をいきなり全てのユーザーに求めるのは酷というものです。

そこで、気づきのきっかけを作ります。


気づきにくい特殊な操作

脱出ゲームは、ぱっと見で分からないような場所に物を隠すことが多く、それを探すのも一つの楽しみです。

しかし、そういうゲームだと分からない人にも楽しんでプレイしてもらうために、隠し場所をクリックするという操作を覚えてもらわなくてはいけません。

そこで、今作ではこのような仕組みを導入しました。

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部屋2から部屋1へ移動する際に、サブリミナル的に赤い物がチラっと見えます。

何度か移動していると気づくこともあると思います。

それを補助するために、視線が分散しないよう前面になるべく物を置かない工夫もしています。

少し分かりづらいヒントですが、2Dではなく3Dで脱出ゲームを作っているからこそ使えるテクニックです。

これに気づいたら、「ベッドの下を見る」という操作を探そうとしませんか?

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ベッドの下の隙間をクリックするとこうなります。

これでアイテムが隠されているということをユーザーは理解してくれます。

このヒントに気づかなかった場合でも、このゲームはクリックするとズームする場所とそうでない場所があるという仕様で、複数の場所にそういう仕掛けがあるため、いずれ気づくことになるでしょう。


ゲーム特有の特殊な操作

実生活の経験から得られる知識や、他のゲームの経験から得られる知識など、ユーザーによっては様々なのでゲーム特有の装置については、なるべく多めにヒントをちりばめたいものです。

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今回の場合はこの二つの装置ですね。

いくつか工夫をちりばめたので、具体的な工夫は後述します。

この装置を見てどのような情報を得るか、どのように操作してみようと思うか、やはり人それぞれです。

作る側として大切なのは、ユーザーが何らかのヒントを基に解答に近づけるようにガイドをすることだと思います。

使い方の説明書を書くのではなく、手探りで使っているうちに仕組みを連想し理解していく事で面白さに繋げていきます。


上記の点を踏まえて工夫したこと

ズーム操作

クリックするとズームするところが9か所あります。

隠してあるアイテムを取るためのズームだったり、装置を操作するためのズームだったり、用途は異なります。

隠してあるアイテムを取るためのズームは正確にクリックする必要があり、なるべく適当なクリックでは反応しないようにしています。

これは偶然でクリアしても面白くないからです。もちろん隠しているアイテムはズームしないと取れません。

また、探すためのズームという操作を覚えてもらうために、装置やドアなど意味ありげで大きな判定のものも用意しました。


見えるけど取れないアイテム

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装置2の下の部分です。

取れそうな物をわざと遮って置くことで、これは取れる物(クリアに必要な物)かもしれないという認識ができるとともに、何か別途操作が必要だと認識してもらいます。

取れるものだと認識したら、似たようなものは取れると認識しますので、別の場所で見かけると自然とクリックするように誘導します。

今回は半透明なガラスで遮りました。ゲームによっては高所に置いたり、手の入らなそうな狭いところに置くなどの工夫も良いですね。


アイテム入手

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恐らく最初にユーザーが手に入れるアイテムです。

ゲーム内で隠されずに配置されており、さらに回転しているので一番見つけやすい物だからです。

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これをクリックすると画面上から消え、上のアイテム欄に収納されます。

その際、枠と背景色が変わります。

これは選択状態を意味しますが、他と違う(入手したアイテム欄や使えるアイテムだから色が変わっているという可能性もある)ことが意識できれば良いくらいの認識です。

もう少し分かりやすくするには、selectedなどの文字の説明を入れても良いかもしれませんが、文字を入れないスタンスで開発していたので今回はいれていません。(最終的に時間的な問題からクリア表示は文字にしちゃったんですけどね……。)

入手したタイミングでパッと表示を切り替えるのではなく、ボタンの大きさのアニメーションや、音を鳴らすなどの工夫もあると良いですが、今回は時間の都合でカットしました。


簡単な装置

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宝箱は恐らく殆どの人が知っている装置です。

このゲームでは道具を選択するという概念があるので、鍵を選択していないと宝箱は開きません。

それを理解してもらうために、簡単な仕組みとして用意しました。

適切なアイテムを選択状態にして、適切な個所をクリックする。

この流れを実際の宝箱という装置から使い方を連想して操作してもらうことで、ゲーム内の「道具を選択」という概念を理解してもらいます。


似たアイテム

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インクタンクの設置画面です。

緑だけは何かアイテムありますけど、赤と青は空だということが分かります。

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となると、これ怪しいですよね?

でも取れません。

このように配置するだけで、

  • このアイテムは取れるはず
  • 何か操作をしないと取れない
  • 取れたら1枚目の青いところに使うんだろう(使うところの予想がつく)
  • 赤い物もどこかにあるだろう

と情報が増えて連想できる範囲が広がります。

日常の生活空間にあるようなものなら用途の想像もつきやすいですが、ゲーム内特有なものは製作者の方で使い方の誘導をすると理不尽だと感じることも減ると思います。


装置の連動

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装置を連動させる場合は、何らかの関連性を持たせると連想しやすいです。

赤インクを手に入れてセットした状態です。

隣の装置の赤いランプが付いています。

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最初は付いていなかったものです。

ユーザーが気づくタイミングがいつになるかは分かりませんが、連動しているんだという認識は場所や色、形などで何らかの関連性を持たせることでユーザーの発見を促します。


装置の使い方 その1

このゲーム独自の装置なので、使い方を説明or誘導する必要があります。

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クリックしたくなるような形状や大きさを意識しました。

反応したorしなかった時の音やエフェクトも用意したかったのですが、時間の都合で出来る範囲での工夫です。

なるべくパネルの操作に気づいてほしかったので、最初に緑のインクは設定して使える状態にしておき、ジェムも設置しておきました。

今考えてみると、黒いジェムではなく緑のジェムを置き、取得するとパネルの色を消す方が良かったかもしれません。


装置の使い方 その2

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謎解きのメイン要素となる装置です。

こちらの装置に解答の通りにジェムを並べることで下にある扉が開きます。

ここでは正解したかどうかが分からないので、ボタンを押したときに判定の音を用意しました。

設置したときに自動判定ではなくボタンを押して判定する方法を採用したのは、ランダムで正解されることを避けるためです。

ボタンを押す手間を加えることで総当たりでの解答にたどり着く試みを起こさせない方法です。

ここでもジェムを設置してもらうために、装置1にあるオブジェクトと同じものを用意しています。


謎解き部分

今回は謎解き部分は簡単にしました。

ヒントの色通りにジェムを並べるだけです。

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  • 設置する台は5個
  • ジェムは色が変えられる
  • 青インクは手に入らない
  • ジェムは3個しかない

という条件から、ヒント1と関連付けて色を並べることになります。


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下の扉が開いて青インクとジェムが1個手に入るので上記の条件が更新されます。

そこからヒント2と関連付けることになります。

鍵を手に入れたらドアノブに使用して脱出は完了です。


色に関係する物なのでさらに難易度を上げるとするなら

  • 光の三原色(RGB)だけではなく、色材の三原色(CMY)も混ぜる
  • プルキンエ現象を活用する

などを混ぜると難易度が上がって歯ごたえが増すかもしれません。

しかし、その場合でもユーザーが気づく何らかのきっかけ(プルキンエ現象なんて知らない人が多いのですから、ランプの色が違うところで同じものを見て見え方が違うことに気づくような仕組み)があると良いかと思います。

今回の色合成については、トグルボタンが3種類の8パターンしかないので知らない人でも試行による気づきに結び付けて欲しいと思いながら敢えてゲーム内での説明を省きました。


最後に

文字にしてみると結構長かったです。

長々とお付き合いいただきありがとうございました。

これだけの長さの記事を書いたのは初めてですw

脱出ゲームを作ってみて初めて分かることが多く、勉強になりました。

ゲーム一つを作るにしても色々考えているんだなーというのを感じてもらえれば嬉しいです。

また、この記事が脱出ゲームを作るきっかけやレベルデザインの参考になれば幸いです。

ツッコミなどもお待ちしています。